雁木対策早繰り銀(14) -54歩型まとめ-

長々と手順を解説してきましたが、最後に54歩型における重要な手・頻出の手筋をまとめていきます。

早繰り銀を普段指さない方は、ここだけでも覚えてもらえれば役に立つと思います。

下図から35歩と仕掛けるのがこの戦法の骨子です。

代えて79玉は大きな手ですが、後手の52金がそれ以上に大きな手で後手玉の安全度がぐっと上がります。

35歩に対して
(1)同歩 には46銀36歩26飛
(2)53銀 には34歩同銀38飛
が基本の攻め方です。

また35歩に対する45歩は悪い手ですので咎めに行きましょう。
以下33角成同桂77角(下図)が頻出の3手一組。

上図から35歩24歩同歩同飛23歩と進んだ局面で決め手があります。

ここで飛車を逃げずに34歩が絶好手。
以下24歩33歩成(下図)となって先手大成功です。

(1)以下、後手が42角から角交換の順を選んだ第7図では先手に好手順があります。

ここで24歩同歩44銀が好手。
以下同銀24飛22角には43角(下図)が妙手で決まります。

(2)は以下、後手が45歩と突いた下図の局面で先手に大事な手があります。

ここで79玉が絶対の一手。
代えて26銀と出ると以下77角成同銀27角39飛49角成同飛38金(下図)の強烈なカウンターを喫します。

79玉以下後手が角交換から駒組を進めてきた場合には36銀と立つのが角打ちの隙もなくして好形です。

この後はすぐに攻めるのではなく、88玉~59金~48金として自玉を安全にしてから攻めの体勢を築けば作戦勝ちが見込めるでしょう。

 

以上で54歩型の解説を終わります。
次回から74歩型を見ていきます。

雁木対策早繰り銀(13) -54歩型⑪-

第23図からの進行を見ていきます。

第23図から
△65銀 ▲75角 △52金 ▲56歩 (第24図)

65銀に75歩とすると76歩と垂らす手があります。
以下66歩で銀が捕まっているようですがそこで45歩(下図)がうまい切り返しで後手が一本取った格好です。
86歩を同角と取らせた手が活きています。

本譜は75角から局面を収めにいきます。

第24図から
△41玉 ▲58金 △74銀 ▲57角 △64歩 ▲35銀 (結果図)

お互いに陣形を整えて結果図。
先手と後手で囲いはほとんど同じですが先手の方が攻め駒が前に出ています。
次は34銀ではなく24歩同歩28飛として2筋を狙うのが厳しい攻めになります。
結果図は先手良しです。

第18図から (b) 43銀 は後手からの反撃を面倒見てから攻めに転じて先手良しとなります。

以上をもって第1図から (2)53銀 は先手良しとします。

 

 

 

 

 

雁木対策早繰り銀(12) -54歩型⑩-

第18図から (b) 43銀 とする手を見ていきます。

43銀は駒の当たりを避けた手ですが角頭の受けを放棄しているので後手は攻め合いで勝負します。

第18図から
△43銀 ▲36銀 △64銀 ▲66歩 △74歩 ▲67銀 (第22図)

64銀に代えて74歩とするのは以下35銀75歩同歩64銀に74歩(下図)として後手が攻めあぐねます。
以下84飛には95角が王手飛車です。

64銀に35銀もありそうですが、後手にも45歩の決戦策が生じます。
先手は右辺でポイントを挙げているので、66歩から後手の攻めの面倒を見る順を本譜とします。

第22図から
△75歩 ▲65歩 △86歩 ▲同角(第23図)

75歩に65歩は突き違いの手筋で、以下65同銀は75歩(下図)と戻して先手良しです。

次の66歩の銀取りを受けるには55歩しかありませんが、55同角が飛車に当たっています。

また、本譜86歩に同歩と取ると、以下76歩同銀に75歩(下図)と打つ手が成立します。

以下64歩76歩と銀を取り合ったときに95角と王手で飛び出す手が無いのが86歩の突き捨ての効果です。

次回に続きます。

 

 

雁木対策早繰り銀(11) -54歩型⑨-

第19図から [1] 44銀 を見ていきます。

第19図から
△44銀 ▲26銀 △35歩 ▲48金 (第20図)

44銀は3~5筋に厚みを作って模様勝ちを狙った手で、古くからある雁木らしい戦い方です。
先手は攻めの糸口を見つける必要がありますが、48金からこの金を攻めに参加させるのが好着想。
79玉と寄った手が効いていて金銀2枚でも先手玉は安定感があります。

第20図から
△55歩 ▲88玉 △43金 ▲37金 △54金 ▲66歩 △64歩 ▲36歩 (結果図)

54金には65金を防いで66歩と突いておくのが手堅いでしょう。
36歩と合わせていった結果図は攻めの金銀が捌ける目途が立って先手十分です。
後手玉は薄いので攻めが繋がってしまえばひとたまりもありません。

続いて第19図から [2] 77角成 を見ていきます。

第19図から
△77角成 ▲同銀 △43銀 ▲36銀 (第21図)

43銀に代えて44銀~35歩と抑え込みを狙うのは角交換をしている分、後手はバランスのとり方に苦労することになります。
先手は玉をしっかり囲ってから46歩と突いていくイメージで良くできそうです。
本譜は43銀として自陣を引き締めましたが36銀と立った形が角打ちの隙が無く好形です。

第21図から
△44眼右 ▲88玉 △41玉 ▲37桂 △33桂 ▲35歩 (結果図)

先手が悠々と矢倉に入っているのに対して、後手は52金と上がると71角の筋があるため囲い方が難しいです。
結果図から先手は59金~68金上という自然な手がありますが後手は攻防ともに指す手に窮しています。
52玉~41玉等でひたすら待機してくるようなら26角と設置して71角に48飛と回り、次の46歩を見せれば先手十分です。

第18図から (a) 45歩 は先手十分となりました。

雁木対策早繰り銀(10) -54歩型⑧-

第1図から後手が (2)53銀 と上がる手を見ていきます。

53銀は4,5筋を厚くして先手の攻め駒を抑え込むような展開を狙いつつ64銀から角頭を攻める手も見せています。

第1図から
△53銀 ▲34歩 △同銀 ▲38飛 (第18図)

後手が35歩を取らなかった場合は34歩同銀38飛が基本の攻め方です。
銀の進出を保留することで、展開によって26・36・46のどこにでも出られるようになっています。

第18図から (a)45歩 (b)43銀 が考えられるので順に見ていきます。

第18図から
▲45歩 △79玉 (第19図)

45歩は先手の38飛に反応した手で今なら角交換後の24歩がありません。
45歩に26銀と出たくなりますが、以下77角成同銀27角39飛49角成同飛38金(下図)が後手の狙いすましたカウンターで飛車を取られてしまいます。

本譜79玉は38金のときに69飛と逃げる手を用意しています。
38飛の形では、45歩に79玉はセットの手順と思ってもらって大丈夫です。

第19図からさらに [1] 44銀 [2] 77角成 に分岐します。
次回の記事で見ていきましょう。`

雁木対策早繰り銀(9) ー54歩型⑦ー

第12図に戻り [2] 53銀 を見ていきます。

第12図から
△53銀 ▲55歩 △64銀 ▲54歩 △55歩 (第15図)

先手は55歩と取り込んで次の54歩を見せますが、後手は狙い通り銀を繰り出して55歩と抑えます。
次に43銀~54銀とされては完封負けなので、先手は厳しく迫る必要があります。

第15図から
▲53金 △52金 ▲57角 (第16図)

53金として次の63金を防ぐには52金ぐらいですが、57角として次に24角を狙います。
23銀直で形良く受かりそうですがそれには35角(下図)とこちらに出るのが好手。

次の52金~71角成がわかっていても後手は防げません。

第16図で25香には36飛が銀当たりですし33銀左には再度の22歩があります。

第16図から
△53銀 ▲同歩成 △同金 ▲24角 △33銀左 (第17図)

前述したように後手は24角を受ける適当な手段がないので目障りな金を除去しますが24角が実現します。
33銀左に代えて42歩や61玉では35角と引くのが金銀の両取りで決まります。

第17図から
▲54歩 △同金 ▲33角成 △同桂 ▲22飛成 △21金 ▲24龍 △44歩 ▲23歩 (結果図)

角を切る前に54歩と一本叩くのが好手で後の24龍が金当たりになる仕組みです。
結果図は次の22歩成が確実な攻めで先手優勢です。

雁木対策早繰り銀(8) -54歩型⑥-

第12図より [1] 52金 を見ていきます。

第12図から
△52金 ▲55角 △同馬 ▲同歩 △43銀  ▲65角(第13図)

角を手持ちにした先手からは次に65角(32角成と83金の両狙い)があるので43銀と受けますが、先手はそれでも65角と打っていきます。

第13図から
△74歩 ▲24飛 △23香 ▲74飛 △73銀 (第14図)

74歩が受けの形で74同角には84飛と先手で受けることができます。

23香に代えて23歩はありそうですが、以下74飛73香に34金(下図)が意表の好手。

以下42歩43金同金54飛同金同歩(下図)と進んで53銀、83銀、53歩成の三つの狙いがどれも厳しく先手良しです。

第14図から
▲同飛成 △同桂 ▲43角成 △同金 ▲54銀 (結果図)

第14図から先手は攻め続けるしかありません。
大駒2枚を切り飛ばして54銀と食らいついて結果図。

後手は飛角角と持っていますが先手へのいきなりの厳しい手はなく、また金駒を持っていないため受け方が悩ましいです。
結果図は難解な終盤戦ですが先手の方が勝ちやすい局面だと思います。

雁木対策早繰り銀(7) -54歩型⑤-

第6図に戻り (b)64角 とのぞく手を見ていきます。

46歩と一度は受けてみたくなりますが、それには時間差の86歩が好手。
以下、下図まで進んだ局面は47角のキズがあるのが大きく先手難局です。

と言うわけで、先手は19の香取りを受けずに攻め合います。

第6図から
△64角 ▲24歩 △同歩 ▲同銀 △19角成 ▲23銀不成 (第10図)

先手は香車を取らせている間に2筋の突破を図ります。
なお23銀不成に代えて23銀成と行くのは42金の余地を与えるだけ損です。

23銀不成に42金だと34銀成同銀21飛成(下図)と突っ込んで先手良しです。

駒損ですが駒の効率が良く、44角と出る手が残っているのが大きく攻めが続きます。

第10図から
△24歩 ▲32銀成 △同銀 ▲44角 (第11図)

第10図から次に飛車を成れれば先手大成功ですが24歩が受けの好手です。
24同飛は33金で後手を引きます。

第11図から
△33銀打 ▲66角 △55歩 ▲22歩 △同銀 ▲56歩 (第12図)

33銀打は当然の受けで代えて33銀では33同角成同桂24飛で飛車の成り込みが受かりません。

駒得の後手は55歩から局面を落ち着かせようとしますが、22歩同銀56歩が三手一組の好手順。
後手の次の手によって、先手は55歩と55角を使い分けていきます。

第12図の後手は手が広い局面です。
[1] 52金 陣形を引き締めつつ玉の脱出経路を開く
[2] 53銀 右銀を繰り出して角を抑え込みに行く
の二通りの応手を見ていきます。

雁木対策早繰り銀(6) -53歩型④-

第6図より (a)86歩 を見ていきます。

第6図から
△86歩 ▲同歩 △同角 ▲同角 △同飛 ▲87歩 △85飛 (第7図)

86歩からの角交換は、後手の狙われそうな角と先手の主砲である角を交換しつつ飛車を好位置に配置してすこぶる味のいい手です。
85飛に対し先手はひるんではいられません。

第7図から
▲24歩 △同歩 ▲44銀 △同銀 ▲24飛(第8図)

24歩同歩に同銀も自然ですが、以下25歩36飛27角39飛49角成同飛38金(下図)の返し技があります。

後手の右辺が壁なこと、持ち駒の角と歩で先手からの攻めが続くこともあり上図自体はいい勝負かもしれません。
しかし後手からの攻めが分かりやすいのと、52金から右辺に逃げた形が捕まえづらいのもあり先手が好んで選ぶ局面ではないように思います。

本譜44銀とこちらに行くのがなんとも強い手で、この戦型における必修手筋です。

第8図では22角で何でもないようですが、そこで43角(下図)が用意の絶妙手。

以下23歩には32角成が次に42金までの詰めろなので後手は飛車を取る暇がありません。
とは言っても代わる応手もなく上図となっては先手の攻めが決まっています。

第8図から
△22歩 ▲44飛 △53銀 ▲43角 (第9図)

本譜22歩は仕方のない受けですが銀を取り返しての43角がまた強手。
以下42金には46飛45歩36飛43金31飛成62玉77桂82飛21龍(下図)と進みます。

一時的に駒損ですが、龍と飛車の働きの差、先手と後手の陣形差が段違いなので先手良しです。
後手からの速い攻めは無いので、先手は37桂や33歩から攻めを厚くする要領で行きましょう。

 

第9図から
△44銀 ▲32角成 △55角 ▲54馬 △52銀 ▲77桂 △84飛 ▲21馬 △19角成 ▲43銀 (結果図)

第9図以下は一例で、結果図もまだ簡単ではないですがやや先手が指せる形勢でしょう。

第6図より (a)86歩 は強行して先手が十分となります

雁木対策早繰り銀(5) -54歩型③-

第1図に戻り後手が(1)35同歩 と取る手を見ていきます。

第1図から
△同歩 ▲46銀 (第5図)

このまま35銀~24歩となれば先手成功なので後手はここから反撃を目指します。
とは言っても第5図からの45歩はやや無理筋で、以下24歩同歩35銀77角成同銀53銀66角33歩24銀(下図)で先手良しです。

途中66角を効かしたのがポイントで単に24銀では64角37歩36歩(下図)のカウンターが厳しく後手良しです。

第5図から
△36歩 ▲26飛 △42角 ▲35銀 (第6図)

 

本譜に戻り第5図からの36歩は取られそうな歩を逃がす手筋で、構わず35銀には37歩成同桂36歩で後手優勢です。

42角に対し一手79玉と貯めるのは有力でそちらの方が本筋かもしれませんが、本譜は初志貫徹で35銀と繰り出します。

第6図から (a)86歩 (b)64角 を次回以降で見ていきます。