先手中飛車対策鳥刺し(12) -銀対抗型 基本図から78飛④-

第16図以降の変化を見ていきます。

第16図より
▲66銀 △22角 ▲78金 △64銀 ▲77桂 (第17図)

66銀は桂取りを狙った手ですが後手は予定通り22角で防ぎます。
78金も次に65銀と取る狙いですが手堅く64銀と受けます。
先手は桂得が難しくなったので77桂とぶつけて自陣の桂を捌きにいきます。

第17図より
△同桂成 ▲同角 △52金右 ▲89飛 △53銀上 (結果図)

以下お互いに自陣の整備をして結果図は全くの互角でこれからの将棋でしょう。

先手はこの後46歩~47銀とするか銀冠に組むのが有力そうです。
後手は44銀と上がって55歩や75歩の仕掛けを狙うのともう一つ24桂という面白い手があります。
次に16桂同香15歩という単純な狙いですが部分的に受けはありません。
タイミングを見計らえば強力な攻めとなりそうです。

以上をもって基本図から78飛は、先手が正確に対応すれば穏やかな展開に戻りいい勝負と結論付けます。

先手中飛車対策鳥刺し(11) ー銀対抗型 基本図から78飛③ー

第9図より (c)68角 の変化を見ていきます。
先手の最有力手と考えてよいでしょう。

第9図より
▲68角 △65銀 ▲同銀 △同桂 ▲88飛  (第15図)

この辺りは細かい変化が散りばめられています。
まず、65銀には57銀と引いてみたくなりますが以下86歩同歩同角88飛85歩(下図)で76銀と出る手が残り後手有利です。

また本譜88飛に代えて46角もありそうですが、64角(下図)がぴったりで先手は指し手に困ります。

すなわち、以下64同角同歩は57桂不成と86歩が同時には受かりませんし、単に88飛も46角同歩57桂不成が決まります。

なお88飛に代えて58金左は第9図より (b)58金左 とした変化に合流します。

本譜88飛は86歩同歩87銀の筋を受けて次に66歩を狙った手ですが、ここで後手に面白い手があります。

第15図より
△34歩 (第16図)

この34歩は知っていないとなかなか指せないと思います。
狙いは単純で66歩に22角を用意しています。

以下の展開は次回見ていきます。

先手中飛車対策鳥刺し(10) -銀対抗型 基本図から78飛②-

第9図より (b)58金左 の変化を見ていきます。

58金左は離れ駒を無くしつつ57の地点を受けていますが、69銀の割り打ちが生じています。
後手はそこを狙って動いていきます。

第9図より
▲58金左 △65銀 ▲同銀 △同桂 ▲68角 (第12図)

本譜68角に代えて59角は後手有利になるので後述します。

また65同銀のところ68角では以下66銀同歩69銀(下図)の割り打ちが実現して後手十分です。

第12図から同じように69銀とすると、以下88飛58銀成同金(下図)となって今度は66歩からの桂取りが残っている後手が忙しいです。

先手の狙いは後手に桂を跳ねさせて負担にさせるというものでした。

第12図より
△86歩 ▲同歩 △87銀 ▲79飛 △86角 (第13図)


86歩同歩87銀の攻めは以前も出てきましたが今度は飛車が捕まるわけではありません。
(先手が68角に代えて59角と引いていると、87銀79飛88銀成69飛78成銀で飛車が捕まるので後手優勢です。)

後手の攻めは重いようですが、飛車先さえ突破してしまえれば先手の飛車が働いていない分指せるという判断です。

第13図より
▲同角  △同飛 ▲68角 △83飛 ▲66歩 (第14図)

86同角に代えて46角は64角とぶつけられて、以下同角同歩となった局面は後手の飛車が82で安定している分後手の得です。

68角は苦しい受けですが単に66歩では78銀成同飛89飛成(下図)で後手優勢です。

以下68飛には77桂成で取れそうだった桂馬で飛車を取られてしまいます。

第14図より
△88角 ▲65歩 △79角成 ▲同角 △78銀不成 ▲46角 △89飛成 ▲91角成 △99龍 ▲46馬 △89飛 (結果図)

88角では88銀59飛89銀不成と進めるのも有力です。
本譜は二枚飛車の攻めを目指しました。
結果図はお互い目一杯捌き合って駒の損得はありませんが、二枚飛車で攻めている後手の方が勝ちやすいと判断します。
後手としてはこの後35桂には31桂、26香には22香といった具合で自玉の安全度を保ちながら指すのが大切です。

先手中飛車対策鳥刺し(9) -銀対抗型 基本図から78飛①-

今回から基本図より78飛の変化を見ていきます。

78飛は75歩の仕掛けを直接受けたもので、それでも75歩には75同歩同銀同銀同角33角成で先手優勢です。

後手は仕掛けがなくなると作戦負けに陥りますので、攻め駒を足していきます。

基本図より
▲78飛 △73桂 (第9図)

75歩からの仕掛けがなくなったので今度は73桂と跳ねて65銀の仕掛けを狙います。
ここから (a)46歩 (b)58金左 (c)68角 を順に見て行きます 。
後手は全て65銀と仕掛けていきます。

第9図より
▲46歩 △65銀 ▲同銀 △同桂 ▲68角 (第10図)

65銀に対して56歩と76歩のどちらも取られるわけにはいかないので先手は65同銀の一手です。
以下第10図まで進んで次に88飛とできれば先手陣も安定するのですが、ここで後手から厳しい攻めがあります。

第10図より
△86歩 ▲同歩 △87銀 (第11図)

この87銀で先手の飛車が捕まっています。
間違いなく後手優勢ですが、わかりやすくするためもう少し進めてみます。

第11図より
▲79飛 △88銀成 ▲66歩 △79成銀 ▲同金 △86角 ▲同角 △同飛 ▲65歩 △57角 (結果図)

最終手57角が決め手で、以下68銀には同角成同金89飛成で次に飛車を下す手が厳しすぎます。

第9図より (a)46歩 は駒組を進めて自然ですが、後手からの攻めを甘く見ていた危険な手でした。

次回 (b)58金左 の変化を見ていきます

先手中飛車対策鳥刺し(8) -銀対抗型 基本図から55歩③-

続いて第3図から87歩を見ていきます。

第3図より
▲87歩 △77角成 ▲同桂 △76銀 ▲56飛 (第6図)

77同桂で桂が捌け、56飛で飛車まで捌けてしかも銀取りです。
第6図は一見すると振り飛車大成功のようにも見えますが、後手はここで狙いすました一手を放ちます。

第6図より
△89角 (第7図)

この89角に後手は期待していました。
以下、88金には67角成、68金には67銀不成でいずれも後手優勢なので先手はこの金を逃げることができません。

第7図より
▲76飛 △78角成 ▲65桂 △67馬 ▲73桂成 △同銀 ▲46飛 (第8図)

派手な手順が続きますがどれもほとんどこの一手です。
第8図では55金のような手も見えますが53桂と打たれて途端に怪しくなります。
銀・桂を捌いて馬を作るという戦果を挙げたのでここは丁寧に面倒を見ます。

第8図より
△42金打 ▲54銀 △53歩 ▲63銀成 △62銀 (結果図)

42金打が手堅い受けで、54銀もこれくらいですが53歩が効きます。
67馬の守備力も強大なので43銀成はさすがに無理筋とみて結果図まで進みます。
先手は4筋から攻めたいのですが数の攻めには数で受けられて届きません。
また後手からは87飛成から89龍という非常に速い攻めがあります。
以上を踏まえて結果図は後手有利とします。

第3図より (a)86同角 (b)87歩 のいずれも後手有利となったので、基本図から先手の55歩の仕掛けは無理筋で後手有利と結論付けます。

先手中飛車対策鳥刺し(7) -銀対抗型 基本図から55歩②-

第3図から (a)86同角 (b)87歩 を順に見ていきます。

第3図より
▲同角 △同飛 ▲87歩 △76飛 (第4図)

ここで横歩を取る76飛が成立します。
先手は次の57歩成を受ける必要がありますが、77歩は75飛と引いて次の69角を見せて後手十分、77桂には69角68飛78角成同飛57歩成(下図)で後手優勢です。

第4図より
▲77金 △57歩成 △同飛 ▲68角 (第5図)

後手は強気に踏み込みます。
ここで76金には57角成65金同桂(下図)と駒を取り合って後手優勢です。

以下81飛には71金91飛成48金同金同馬49金57桂成(下図)と張り付いていく攻めが振りほどけません。

第5図より
▲55飛 △77飛成 ▲同桂 △同角成 ▲46角 △81歩 (結果図)

77飛成では77角成と行く手もあり比較は難しいですが、77にいる駒は龍より馬の方が効いています。
46角は攻防に効かした角ですが、最終手81歩が81飛を消した渋い受けで先手からの厳しい攻めがありません。
以下15歩は気になるところですが、15同歩13歩に16桂が厳しい反撃で後手良しです。
結果図はまだまだ勝つまでは長いですが後手有利とみてよいでしょう。

先手中飛車対策鳥刺し(6) -銀対抗型 基本図から55歩①-

今回から基本図以下の攻防を検討していきます。

まずは銀対抗型基本図より (1)▲55歩 について

先手が最も突っ張った指し方ですね。
これで先手がいいなら鳥刺しが構想として破綻しています。
かなり華々しい戦いになるのでその攻防をゆっくり見ていきましょう。

基本図より
▲55歩 △同歩 ▲同銀 △86歩 ▲同歩 △65銀 (第1図)

途中、86歩に同角は55銀と戻して以下
1)31角成は同玉55飛87飛成
2)55同飛は86角同歩同飛
でいずれも後手優勢なので、このタイミングが一番良いでしょう。

55銀に65銀は手筋で、ここを55同銀では同角86飛88歩で難しくなります。

第1図より
▲54銀 △73桂 ▲78金 △56歩 (第2図)

ここから後手が技を見せます。
54銀は銀交換を迫ったもので、76銀には55角86飛91角成89飛成59金左(下図)と一直線に進めて難しい終盤戦ですが、先手の美濃が堅いのに対して後手は46香や55馬から43銀成が厳しく、かなり後手が勝ちづらい将棋と言えるでしょう。

54銀には73桂が幸便な活用で以下65銀には同桂55角86飛91角成89飛成(下図)となって後手大優勢です。
右桂が捌けているのが大きく、以下59金左には57歩48飛86角として後手勝勢です。

先手は仕方なく78金左と左辺をケアしますが56歩がまた好手。
54の銀取りになっていますが65銀はやはり同桂が厳しくこの銀は取れません。

第2図より
△45銀 ▲86角 (第3図)

45銀は不本意な撤退ですが76銀には55角86飛88歩87歩56飛88歩成同角(下図)となって後手決めきれません。

よって後手は86角と角交換を迫ります。
第3図から先手は (a)86同角 (b)87歩 の二通りの応手があるので順に見ていきましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(5) -銀対抗型 基本図までの手順②-

下図で後手の駒組が危険と見て、先手が55歩と突っ掛けていく変化を見ていきます。

上図より
▲55歩 △同歩 ▲同銀 (第0-2図)

先手は狙い通り55に銀を進めます。

第0-2図より
△54歩 ▲同銀 △同銀 ▲同飛 (第0-3図)

次に先手から54歩と抑えられては勝負になりませんので後手の54歩は仕方ありません。
しかし一歩得で銀交換を達成した第0-3図は先手大成功に見えます。
ところがこれは後手の待ち受けるところ、返し技を用意してありました。

第0-3図より
△65銀 (第0-4図)

この65銀が後手の狙っていたカウンターでした。先手は76銀~67銀成を受ける適当な手段がありません。

第0-4図より
▲58飛 △76銀 ▲78金 △77銀成 ▲同桂 △86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87歩 △84飛 (結果図)

先手は67銀成を許すわけにはいかないので78金がまだしもですが、悠々と角を取って結果図。
飛車先をすぐに交換したのも細かいポイントで、48玉には69角68飛78角成同飛87飛成と突っ込む手があるので先手は玉を囲えません。
結果図は問題なく後手優勢でしょう。

最短の55歩の強襲は後手の見事なカウンターが決まって後手優勢となりました。
基本図までに55歩と仕掛ける形はどのタイミングでも54飛に65銀と打つ形にしてしまえば後手が十分となります。

先手中飛車対策鳥刺し(4) -銀対抗型 基本図までの手順①-

【1】銀対抗型 の基本図を再掲します。

今回はこの局面まで進めるための居飛車の駒組の手順について述べていきます。

初手より
▲76歩 △84歩 ▲56歩 △85歩 ▲77角 △54歩 ▲68銀 △62銀 ▲58飛 (第0-0図)

ここまでは56歩に54歩と受けること、うっかり34歩と突かないことを守ってもらえれば問題ありません。

第0-0図より
△42銀 ▲57銀 △53銀左 ▲66銀 △42玉 ▲48玉 △64銀 (第0-1図)

先手はずんずん銀を繰り出していきますが、ここで一つ注意点。
先手の66銀に合わせて64銀と上がると55歩同歩同銀(下図)と銀交換を狙われます。

55銀とぶつけられた形は65銀とかわすのが筋ですが、この場合後手が居玉なので66銀が王手となりいけません。
仕方なく55同銀同飛42玉と進めますが、早い段階で55の地点で銀交換を許すのは後手失敗と思ってもらって結構です。
本譜に戻ります。

第0-1図より
▲38玉 △32玉 ▲16歩 △14歩 ▲28玉 △31角 ▲38銀 △74歩 (基本図)

1筋の歩は先手から突かれたら後手は受けるのが良いでしょう。
以下先手が穏便に進めれば74歩まで、基本図にたどり着きます
以下46歩のような手なら後手は75歩と仕掛けます。
ここで先手として考えられる手は主に3つ
(1)55歩 (2)78飛 (3)68角 がありそれぞれ考察します。

ところで基本図まで先手は漫然と組んでいましたが途中で55歩と仕掛ける手は気になりませんでしたか?
具体的には下図

ここで55歩と突かれると一見、居飛車は5筋が支えきれなくなりそうです。
このあたりの対応を次回、見ていきましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(3) -3つの基本図-

先手中飛車対鳥刺しは先手の対応によって3つの形に分類されます。
始めにその3つの形を基本図とともに紹介します。

【1】銀対抗型

先手がもっとも自然に駒組を進めた場合、組みあがりは上図のようになります。
この形は華々しい戦いになりやすいのが特徴です。

 

【2】67銀型

先手が後手の攻めを警戒して67銀型に組むのも、「歩越し銀には歩で対抗」を地で行っており有力です。
実際、この形で後手が64銀と出るとすかさず65歩と突かれて困ってしまいます。
よって、後手は銀を44に上がり、86歩同歩同角の角交換を狙います。

 

【3】5筋交換型

後手は54歩を突いてあるので、しばらくの間55歩からの一歩交換は先手の権利になります。
先手がその権利を行使したときは上図のように進みます。
5筋を交換できたのは先手がポイントを挙げたようにも思えますが、この交換は後手にも有力な反撃策を与えどちらの得かは難しいです。

 

実戦ではかなりの確率で3つの基本図のうちのどれかに進むと思われます。
なお、端歩の関係は難しいですが【2】【3】においては突き合いが入っていた方が居飛車の得になることが多いです。

では早速【1】銀対抗型 から見ていきましょう。