雁木対策早繰り銀(4) -54歩型②-

第1図より後手が45歩と角交換を挑む展開を見ていきます。

狙われそうな角を捌きに行った手で、実戦で現れることも多いと思います。
しかしながらこのタイミングでの45歩ははっきりと悪手です。
先手は確実に咎めに行きましょう。

第1図から
△45歩 ▲33角成 △同桂 ▲77角 (第2図)

33角成と自分から交換して77角と打ち直すのがこの形の急所。
この三手一組はこの後も何度も出てきます。

第2図から
△35歩 ▲24歩 △同歩 ▲同飛 △23歩 (第3図)

後手の35歩は仕方のない所でこのまま34歩同銀24歩とされてはもちません。
飛車先を交換して23歩と打たれた局面、何も考えずに飛車を引きそうなところですが、ここで決め手級の強手があります。

第3図から
▲34歩(第4図)

飛車を見捨てての34歩が絶好手。
先手は低い陣形で飛車を渡しても怖くありません。

第4図から
△24歩 ▲33歩成 (結果図)

結果図は一時的に駒損ですが32の金と11の香が取れることが確定しており、次の32とが詰めろで入ること、11角成から66馬が84香を狙って厳しいこと、自陣に隙がないこともあり先手大優勢です。

雁木対策早繰り銀(3) -54歩型①-

テーマ図より後手が54歩とする将棋を見ていきます。

テーマ図から
△54歩 (基本図)

54歩は ①53銀と上がって44の地点を強化する ②42角と引いて86歩や64角から角を捌く の二つの意味があります。

これから基本図以降の手順を見ていきますが、一つだけ意識してもらいたいのは、基本図の後手陣は右辺が壁でかなり危険な格好をしているということです。
具体的に言うと32の金を取る手が常に詰めろで入ります。
そのため先手は飛車を切っての猛攻が成立することがよくあります。
仮に先後が逆(先手が雁木)だと52金の一手が入っているのがすこぶる大きく、早繰り銀側は攻め方がかなり制限されることになります。

基本図から
▲35歩 (第1図)

基本図から35歩と攻めるのがこの戦法の基本の攻め方です。
代えて単に46銀と出ると以下、53銀35歩に45歩(下図)の切り返しを与えます。

ただ、これで先手が悪いというわけではなく、以下45同銀35歩56銀(下図)と立て直していい勝負です。

歩の損得はありませんし後手は角交換になれば5筋を突いてあるのが傷になりやすいです。
しかしながら、早繰り銀から攻めていくという本記事の主旨から外れますのでここでは詳しい変化は割愛します。

基本図より35歩と突いた第1図では後手から(1)35同歩 (2)53銀 の二通りの応手が有力ですが、その前に45歩への対応を見ていきましょう。

雁木対策早繰り銀(2) -テーマ図までの駒組-

まず初めに雁木対策早繰り銀のテーマ図を示します。

後手が雁木の形(43銀・32金・33角)に構えたのに対し、先手は玉の囲いもそこそこに右銀を繰り出します。
先手はこれ以上囲うことはなく、次に35歩から仕掛けていきます。

テーマ図までの駒組を見ていきます。

初手から
▲76歩 △84歩 ▲26歩 △32金 ▲78金 △85歩 ▲77角 △34歩 ▲68銀 △44歩 (第0-1図)

角換わりの定跡型で難しいところはありません。
68銀は小さなポイントで、ここを88銀と上がっては44歩とされたときに左辺の78金・88銀が壁になって急戦を仕掛けづらくなります。
急戦を仕掛けるときは、88銀型より68銀型の方がバランスが良く好都合な場合が多いです。

第0-1図から
▲25歩 △33角 ▲48銀 △42銀 ▲69玉 △62銀 ▲36歩 △43銀 ▲37銀 (テーマ図)

足早に進めましたがどちらも自然な手を重ねており問題ないでしょう。

さて、テーマ図から先手は次に35歩同歩46銀の仕掛けを狙っています。
ここで後手から(1)54歩 (2)74歩 (3)52金 の三通りが考えられますので、それぞれ【54歩型】【74歩型】【52金型】として見ていきます。

なおテーマ図から64歩は後手からの反撃手段に乏しく、26銀から35歩と仕掛けて先手十分というのが個人的な見解です。

雁木対策早繰り銀(1) -雁木の流行-

雁木が流行しています。
立ち上がりは様々ですがおそらく最も多いのが下図の形

角換わりの出だしですが、ここで44歩と角道を止めるのが古くて新しい形。
昔からある指し方で加藤一二三九段が得意にされていた印象があります。
しかし、自分だけ角道を止める分、消極的な指し方としてメジャーにはなっていませんでした。

この後駒組を進めて下図が組みあがりの一例です。

63銀型にしたのが後手の工夫で①角交換に強いこと②65歩同歩75歩からの攻めが迫力があること の二点が評価されて、この形は後手がまずまずやれるということがわかってきました。
この辺りの詳しい話は将棋世界2017年11月号に詳しく記載されているので一読することをお勧めします。

さて、持久戦が後手も戦えるとわかってきて先手は急戦策を模索し始めました。
先手の急戦策は大きく分けて二つ ①腰掛け銀 ②早繰り銀 です。

①腰掛け銀については後手が万全に構えると先手も角道を止めて「相雁木」と呼ばれる形になることもよくあります。
②早繰り銀では先手が角道を止めることはかなり少ないです。攻め駒を配置したらすぐさま仕掛けます。

プロの実践例が多いのは①腰掛け銀ですが、本ブログでは②早繰り銀を採用します。
次回に続きます。

先手中飛車対策鳥刺し(18) -銀対抗型 基本図から68角⑥-

第19図まで戻り先手が (b)55飛 とする変化を見ていきます。

第19図以下
▲55飛 △66銀 ▲同歩 △74飛 ▲77桂 (第31図)

77桂に代えて77歩では86歩同歩同角(下図)とされて先手不満です。

これでは (a)75同銀 の変化と比べて66歩型が得にならず、先手から動く手段も難しいです。

77歩に代えて77桂と跳ねるのが66歩型を活かした手で、76歩には調子良く65桂と跳ねる手があります。
第30図での76歩には85桂と跳ねるのが好手で先手良しです。

第31図より
△64角 ▲56飛 △31角 ▲55飛 (結果図)

64角に59飛は15歩同歩76歩(下図)が好手順で、以下65桂同桂同歩36桂で端の突き捨てが入っているのが大きく寄り筋です。

64角56飛に31角と引いた局面では次に76歩65桂同桂同歩77銀の攻めがありますがそれを防ぐ手段は難しいです。
仕方なく55飛と浮いて受けた結果図は第31図と同一局面になっています。

以上をもって第19図より (b)55飛 は後手が望めば千日手と結論付けます。

まとめると基本図より68角の変化は第19図(下図)まで進んで (a)75同銀 は後手良し (b)55飛 は後手が望めば千日手となります。

以上で銀対抗型の考察を終わります。

先手中飛車対策鳥刺し(17) -銀対抗型 基本図から68角⑤-

第28図以降の攻防を見ていきます。

第28図より
▲49銀 △58歩 (第29図)

49銀は唯一の受けですが58歩が焦点の歩。
同銀は48角成、同金は39銀、同飛は69銀があるので先手はこの歩を取れません。

第29図より
▲79飛 △59銀 ▲57歩 △77歩 ▲同桂 △68銀成 ▲同金(第30図)

79飛には59銀が厳しい追撃で、以下38金には57桂成77角48銀打(下図)と絡みついて後手優勢。

また59銀に同角も同歩成同飛に再度の58歩(下図)が決め手。

以下同飛の一手に48角成とばっさり切って、同銀は49角、同飛は57桂成でいずれも寄っています。

本譜57歩は最善の粘りですが、77歩がそつのない利かしで飛車の直通を避けています。
以下第30図まで進んで決め手があります。

第30図より
△57桂成 ▲同金右 △同角成 △同金 ▲68角 (結果図)

57の地点で清算して68角の両取りが分かりやすい決め手です。
75同飛からの流れるような攻めが決まり結果図は後手勝勢です。

第20図より〈1〉56飛 〈2〉59飛 のどちらも後手が良くなったので、第19図より (a)75同銀 は後手良しと結論付けます。

先手中飛車対策鳥刺し(16) -銀対抗型 基本図から68角④-

第20図より 〈2〉59飛 を見ていきます。
59飛は56飛に比べて飛車が下段で安定している反面58歩を常に狙われます。

第20図より
▲59飛 △74飛 ▲77歩 △58歩 (第25図)

前述した58歩を後手はいきなり敢行します。
同飛は69銀があるので同金の一手ですがこの金が49まで戻ってくるには2手掛かります。
後手はその間に手を作りに行きます。

第25図より
▲同金 △75角 ▲66銀 △84角 (第26図)

58同金に75角が小気味のいい覗きです。
先手は次の48銀79飛54飛を受けなければいけませんが、ぴったりした手がありません。
57歩では84角と引かれて一歩得でも陣形差がありすぎてとても釣り合いが取れないでしょう。
先手は仕方なく66銀と投資しますが、後手は84角とこのラインで角を使います。

第26図より
▲48金 △64歩 ▲76歩 △65桂(第27図)

48金は角のラインに入るので怖い手ですが、放っておいても64歩~65歩がある上に54飛と回る手もあるので仕方ないところでしょう。
ただし64歩に49金と引くのは、以下65歩57銀54飛(下図)となって後手十分です。
次に56歩があるので先手から56歩と打たなければいけないのが辛く、後手は52金右~63銀と自然に駒組を進めて、機を見て8筋を狙えばよくなりそうです。

本譜76歩は手筋で76同飛には77金74飛75歩(下図)で先手優勢です。

後手が困ったようですが65桂が強手。
75銀の飛角両取りがありますが後手はそれで指せるとみています。

第27図より
▲75銀 △同飛 ▲同歩 △同角 (第28図)


当然の75銀に同飛と叩き切って第28図に進みます。
後手の75角が金に当たっていますが、先手は味のいい受け方がありません。
49金は48銀、57歩は56歩でいずれも受けになっていません。

次回に続きます。

先手中飛車対策鳥刺し(15) -銀対抗型 基本図から68角③-

第23図以下の進行を見ていきます。

第23図より
▲79飛 △69銀 (第24図)

 

89飛に81飛と攻め合いを目指すのは、以下51歩91飛成65桂61龍77桂成同角36桂(下図)で先手玉が寄ってしまいます。

本譜79飛は手筋ですが69銀が鋭手です。
後手はこの手が無いと攻めになりません。
以下同飛は同飛成79金同龍同角78飛で後手優勢です。

第24図より
▲89飛 △78銀成 ▲35角 △89成銀 ▲81飛 △71歩 (結果図)

以下はほとんど必然手の応酬で結果図まで進みます。
89の成銀が遊んでいるのは気になりますが
①金得の実利 ②91飛成に65桂がある
の二点を考え後手優勢と判断してよいでしょう。

後手としてはこの後食いつかれないように丁寧に面倒を見ていく方針で行きましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(14) -銀対抗型 基本図から68角②-

第19図より (a)75同銀 を見ていきます。

第19図より
▲同銀 △同角 ▲55飛 △64角 (第20図)

ここで〈1〉56飛 〈2〉59飛 に分岐します。

〈1〉56飛から見ていきます。

第20図より
▲56飛 △74飛 ▲77歩 △52金右 (第21図)

77歩に代えて77角は65桂でだめ、76歩は次に75銀を狙って考えてみたくなりますが、45銀が好手で以下26飛53角66飛44角(下図)と飛車を召し取って後手良しです。

さて、第21図で先手は動かしたい駒がほとんどありません。
このまま53銀~44銀と抑え込まれてはいけないので勝負に出ます。

第21図より
▲76飛 (第22図)

76飛が低い陣形を活かした好手です。
対して後手は75歩と受ける手もなくはないですが、56飛と戻られて84飛には76歩、53銀には55銀があり指し手が難しいです。

第22図より
▲同飛 △同歩 ▲77歩 △同桂 ▲89飛(第23図)

77歩に同角は以下65桂66角69飛79飛49飛成同銀57銀(下図)で後手良しです。

以下84角には77歩として、桂馬を持てば36桂の狙いがあるので先手潰れです。

次回に続きます。

先手中飛車対策鳥刺し(13) -銀対抗型 基本図から68角①-

基本図から68角という手を見ていきます。

68角は更に59飛、78金として自陣の隙を消した後に55歩と仕掛けていこうという手です。
代えて先に59飛や78金では75歩の仕掛けを与えてしまいます。

68角に75歩の仕掛けは以下75同歩同銀同銀同角46角73歩74歩(下図)として、55歩同歩同飛と78飛から飛車を捌く手を見せて先手ペースです。

基本図より
▲68角 △73桂 ▲59飛 △84飛 ▲78金 △75歩 (第18図)

予定通り陣形を整える先手に対して後手は一目散に攻めを狙ってきます。
75歩では52金右や51金右として待つ手も有力ですが、先手から55歩と仕掛ける手や77桂と力をためる手もあり難しい戦いになります。

第18図より
▲55歩 △同歩 ▲75歩 △同銀 (第19図)

75歩に対する55歩は一本は筋という手で損のない手です。
75同銀となった局面で (a)75同銀 (b)55飛 の2通りの応手が考えられるので順に見ていきましょう。