先手中飛車対策鳥刺し(8) -銀対抗型 基本図から55歩③-

続いて第3図から87歩を見ていきます。

第3図より
▲87歩 △77角成 ▲同桂 △76銀 ▲56飛 (第6図)

77同桂で桂が捌け、56飛で飛車まで捌けてしかも銀取りです。
第6図は一見すると振り飛車大成功のようにも見えますが、後手はここで狙いすました一手を放ちます。

第6図より
△89角 (第7図)

この89角に後手は期待していました。
以下、88金には67角成、68金には67銀不成でいずれも後手優勢なので先手はこの金を逃げることができません。

第7図より
▲76飛 △78角成 ▲65桂 △67馬 ▲73桂成 △同銀 ▲46飛 (第8図)

派手な手順が続きますがどれもほとんどこの一手です。
第8図では55金のような手も見えますが53桂と打たれて途端に怪しくなります。
銀・桂を捌いて馬を作るという戦果を挙げたのでここは丁寧に面倒を見ます。

第8図より
△42金打 ▲54銀 △53歩 ▲63銀成 △62銀 (結果図)

42金打が手堅い受けで、54銀もこれくらいですが53歩が効きます。
67馬の守備力も強大なので43銀成はさすがに無理筋とみて結果図まで進みます。
先手は4筋から攻めたいのですが数の攻めには数で受けられて届きません。
また後手からは87飛成から89龍という非常に速い攻めがあります。
以上を踏まえて結果図は後手有利とします。

第3図より (a)86同角 (b)87歩 のいずれも後手有利となったので、基本図から先手の55歩の仕掛けは無理筋で後手有利と結論付けます。

先手中飛車対策鳥刺し(7) -銀対抗型 基本図から55歩②-

第3図から (a)86同角 (b)87歩 を順に見ていきます。

第3図より
▲同角 △同飛 ▲87歩 △76飛 (第4図)

ここで横歩を取る76飛が成立します。
先手は次の57歩成を受ける必要がありますが、77歩は75飛と引いて次の69角を見せて後手十分、77桂には69角68飛78角成同飛57歩成(下図)で後手優勢です。

第4図より
▲77金 △57歩成 △同飛 ▲68角 (第5図)

後手は強気に踏み込みます。
ここで76金には57角成65金同桂(下図)と駒を取り合って後手優勢です。

以下81飛には71金91飛成48金同金同馬49金57桂成(下図)と張り付いていく攻めが振りほどけません。

第5図より
▲55飛 △77飛成 ▲同桂 △同角成 ▲46角 △81歩 (結果図)

77飛成では77角成と行く手もあり比較は難しいですが、77にいる駒は龍より馬の方が効いています。
46角は攻防に効かした角ですが、最終手81歩が81飛を消した渋い受けで先手からの厳しい攻めがありません。
以下15歩は気になるところですが、15同歩13歩に16桂が厳しい反撃で後手良しです。
結果図はまだまだ勝つまでは長いですが後手有利とみてよいでしょう。

先手中飛車対策鳥刺し(6) -銀対抗型 基本図から55歩①-

今回から基本図以下の攻防を検討していきます。

まずは銀対抗型基本図より (1)▲55歩 について

先手が最も突っ張った指し方ですね。
これで先手がいいなら鳥刺しが構想として破綻しています。
かなり華々しい戦いになるのでその攻防をゆっくり見ていきましょう。

基本図より
▲55歩 △同歩 ▲同銀 △86歩 ▲同歩 △65銀 (第1図)

途中、86歩に同角は55銀と戻して以下
1)31角成は同玉55飛87飛成
2)55同飛は86角同歩同飛
でいずれも後手優勢なので、このタイミングが一番良いでしょう。

55銀に65銀は手筋で、ここを55同銀では同角86飛88歩で難しくなります。

第1図より
▲54銀 △73桂 ▲78金 △56歩 (第2図)

ここから後手が技を見せます。
54銀は銀交換を迫ったもので、76銀には55角86飛91角成89飛成59金左(下図)と一直線に進めて難しい終盤戦ですが、先手の美濃が堅いのに対して後手は46香や55馬から43銀成が厳しく、かなり後手が勝ちづらい将棋と言えるでしょう。

54銀には73桂が幸便な活用で以下65銀には同桂55角86飛91角成89飛成(下図)となって後手大優勢です。
右桂が捌けているのが大きく、以下59金左には57歩48飛86角として後手勝勢です。

先手は仕方なく78金左と左辺をケアしますが56歩がまた好手。
54の銀取りになっていますが65銀はやはり同桂が厳しくこの銀は取れません。

第2図より
△45銀 ▲86角 (第3図)

45銀は不本意な撤退ですが76銀には55角86飛88歩87歩56飛88歩成同角(下図)となって後手決めきれません。

よって後手は86角と角交換を迫ります。
第3図から先手は (a)86同角 (b)87歩 の二通りの応手があるので順に見ていきましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(5) -銀対抗型 基本図までの手順②-

下図で後手の駒組が危険と見て、先手が55歩と突っ掛けていく変化を見ていきます。

上図より
▲55歩 △同歩 ▲同銀 (第0-2図)

先手は狙い通り55に銀を進めます。

第0-2図より
△54歩 ▲同銀 △同銀 ▲同飛 (第0-3図)

次に先手から54歩と抑えられては勝負になりませんので後手の54歩は仕方ありません。
しかし一歩得で銀交換を達成した第0-3図は先手大成功に見えます。
ところがこれは後手の待ち受けるところ、返し技を用意してありました。

第0-3図より
△65銀 (第0-4図)

この65銀が後手の狙っていたカウンターでした。先手は76銀~67銀成を受ける適当な手段がありません。

第0-4図より
▲58飛 △76銀 ▲78金 △77銀成 ▲同桂 △86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87歩 △84飛 (結果図)

先手は67銀成を許すわけにはいかないので78金がまだしもですが、悠々と角を取って結果図。
飛車先をすぐに交換したのも細かいポイントで、48玉には69角68飛78角成同飛87飛成と突っ込む手があるので先手は玉を囲えません。
結果図は問題なく後手優勢でしょう。

最短の55歩の強襲は後手の見事なカウンターが決まって後手優勢となりました。
基本図までに55歩と仕掛ける形はどのタイミングでも54飛に65銀と打つ形にしてしまえば後手が十分となります。

先手中飛車対策鳥刺し(4) -銀対抗型 基本図までの手順①-

【1】銀対抗型 の基本図を再掲します。

今回はこの局面まで進めるための居飛車の駒組の手順について述べていきます。

初手より
▲76歩 △84歩 ▲56歩 △85歩 ▲77角 △54歩 ▲68銀 △62銀 ▲58飛 (第0-0図)

ここまでは56歩に54歩と受けること、うっかり34歩と突かないことを守ってもらえれば問題ありません。

第0-0図より
△42銀 ▲57銀 △53銀左 ▲66銀 △42玉 ▲48玉 △64銀 (第0-1図)

先手はずんずん銀を繰り出していきますが、ここで一つ注意点。
先手の66銀に合わせて64銀と上がると55歩同歩同銀(下図)と銀交換を狙われます。

55銀とぶつけられた形は65銀とかわすのが筋ですが、この場合後手が居玉なので66銀が王手となりいけません。
仕方なく55同銀同飛42玉と進めますが、早い段階で55の地点で銀交換を許すのは後手失敗と思ってもらって結構です。
本譜に戻ります。

第0-1図より
▲38玉 △32玉 ▲16歩 △14歩 ▲28玉 △31角 ▲38銀 △74歩 (基本図)

1筋の歩は先手から突かれたら後手は受けるのが良いでしょう。
以下先手が穏便に進めれば74歩まで、基本図にたどり着きます
以下46歩のような手なら後手は75歩と仕掛けます。
ここで先手として考えられる手は主に3つ
(1)55歩 (2)78飛 (3)68角 がありそれぞれ考察します。

ところで基本図まで先手は漫然と組んでいましたが途中で55歩と仕掛ける手は気になりませんでしたか?
具体的には下図

ここで55歩と突かれると一見、居飛車は5筋が支えきれなくなりそうです。
このあたりの対応を次回、見ていきましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(3) -3つの基本図-

先手中飛車対鳥刺しは先手の対応によって3つの形に分類されます。
始めにその3つの形を基本図とともに紹介します。

【1】銀対抗型

先手がもっとも自然に駒組を進めた場合、組みあがりは上図のようになります。
この形は華々しい戦いになりやすいのが特徴です。

 

【2】67銀型

先手が後手の攻めを警戒して67銀型に組むのも、「歩越し銀には歩で対抗」を地で行っており有力です。
実際、この形で後手が64銀と出るとすかさず65歩と突かれて困ってしまいます。
よって、後手は銀を44に上がり、86歩同歩同角の角交換を狙います。

 

【3】5筋交換型

後手は54歩を突いてあるので、しばらくの間55歩からの一歩交換は先手の権利になります。
先手がその権利を行使したときは上図のように進みます。
5筋を交換できたのは先手がポイントを挙げたようにも思えますが、この交換は後手にも有力な反撃策を与えどちらの得かは難しいです。

 

実戦ではかなりの確率で3つの基本図のうちのどれかに進むと思われます。
なお、端歩の関係は難しいですが【2】【3】においては突き合いが入っていた方が居飛車の得になることが多いです。

では早速【1】銀対抗型 から見ていきましょう。

先手中飛車対策鳥刺し(2) -鳥刺しって何?-

では鳥刺しの紹介に入りましょう。

鳥刺しとは振り飛車対策として古くからある戦法で、メジャーではありませんが現在も少数のスペシャリストたちによって指されています。

上図が先手四間飛車対後手鳥刺しの一例です。

鳥刺しの最大の特徴見ての通り34歩を突かずに31角と引き角にしているところ。
こうすることで先手の角の捌きを抑えつつ左銀に紐をつけて攻めやすくしています。
鳥刺し側はこの後75歩同歩64銀と出ていくのが一つの狙いとなります。

そして先手中飛車対鳥刺しの組みあがりの一例は下図のようになります。

ここで前記事の先手中飛車に急戦が難しい2つの理由を思い出してみてください。
一つ目が「角を捌かれやすい」でした。
これについては明快、居飛車が引き角にしているため振り飛車から角交換を挑めません。
したがって中飛車側は角を捌くのに苦労することになります。
二つ目は「5筋からの反撃が厳しい」です。
図を見てもわかるように(左銀はいなくとも)居飛車は53の地点に右銀と角の2枚が効いています。
さらに52金右と上がることで3枚の駒を効かせられるので、単純に53の地点を突破されることはまずありません。

つまり鳥刺しはその駒組からして2つの課題をクリアしているのです。
しかし、一つだけ注意点を述べると駒組に進展性がありません。
つまり、振り飛車側はここから銀冠に組んだり4筋を伸ばしたりとやりたい手が山ほどあるのに対し、居飛車側は囲いようがなく52金右と73桂を場合によっては入れるぐらいです。
すなわち、手をこまねているとすぐに作戦負けに陥ります(特に振り飛車が4筋を伸ばす手はかなり大きな手になります。)
したがって組みあがったら攻めるしかありません。
これはこの戦型における一貫した指針となります。

次回以降では具体的な局面と手順について解説していきます。

 

先手中飛車対策鳥刺し(1) -強敵先手中飛車-

記念すべき第一回のテーマは先手中飛車対策としての鳥刺し戦法を取り上げます。

そもそも先手中飛車というのはもっとも急戦が通りにくい振り飛車と考えていまして、その理由として大きく
(1)振り飛車が角道を止めていないので角を捌かれやすい
(2)振り飛車の5筋からの反撃が居飛車の玉に近く厳しい
の二点が挙げられます。

(1)について、例えば四間飛車相手に75銀と出られれば一般的に居飛車成功とされていますが、先手中飛車に対しては54歩一発で角・飛車を両方とも捌かれ75銀が取り残されたままになるということが多々あります。
もちろん居飛車側も工夫して仕掛けるのですが、振り飛車の最大の弱点である角頭が狙いにくいのは確かです。

(2)について、これは(1)とも関係してくるのですが中飛車は5筋から攻めてきます。
そして居飛車の玉は急戦の場合32にいます。
したがって5筋を突破されたらまず勝てません、「53のと金に負けなし」はよく当てにならない格言の代表格として取り上げられますが、この戦型にはほとんどそのまま当てはまります。

最近、角道不突き左美濃という戦法が流行っていますが、あれは角道を突かないことにより(1)を避け、さらに玉を31(場合によっては22)まで持っていくことで(2)を緩和しています。

なら角道不突き左美濃でいいじゃん?と思うかもしれませんが、あの戦法は展開によっては銀冠→穴熊と持久戦にする含みがあり、もちろん理にかなっているのですが根っからの急戦党には不本意な展開とも言えます。

鳥刺しは玉を32より深く囲うことはありません、というか囲えません。
したがって準備ができたら直ちに仕掛けます。
正真正銘の急戦です。

では鳥刺しとはどういう戦法なのか、それを次回の記事で取り上げます。